常に運動しているような状態・
汗がよく出る(汗っかき)方へ
甲状腺機能に異常があると全身に様々な症状があらわれるようになり、そのうちの一つが発汗の異常です。新陳代謝に異常があると、汗がよく出たり、汗があまり出なかったりして、体温調節の役割が果たせなくなります。
発汗に異常を起こす病気は甲状腺機能の異常以外にも、消化器疾患、更年期障害の性ホルモンの変調などもあります。
当院では、内分泌(汗や代謝)を得意とする医師が診療していますので、いつでもご相談ください。
汗がよく出る時に疑われる病気
バセドウ病
甲状腺機能が亢進して、新陳代謝が過剰に働いてしまいます。常に軽い運動をしているように、脈拍は速くなり、大量に発汗します。また暑がりになり、37.5℃前後の微熱、疲れやすくなるなどの症状があらわれます。これまであまり汗をかくこともなかった方が、急に汗かくようになった、疲れやすくなった、手が震えるようになったなどの症状があらわれた場合、ご相談ください。
褐色細胞腫
副腎や交感神経節にできる腫瘍です。褐色細胞腫になると、カテコラミンという物質を過剰に分泌するようになり、高血圧、高血糖、多汗、動悸、頭痛、便秘などの身体の症状の他に、不安感が強くなるなどの精神症状があらわれることもあります
低血糖
何かがきっかけで血糖値が70mg/dL以下に下がってしまうと、低血糖による症状があらわれます。冷や汗、手の震え、強い空腹感といった症状があらわれることがあります。
更年期障害
閉経前後で女性ホルモンのバランスが大きく変化することで様々な症状があらわれます。更年期障害の主な症状はホットフラッシュで、ほてりやのぼせ、多汗などです。症状の不快感から仕事や家事が億劫になったり、症状について人に気遣われることがかえって負担になるなど、生活や人間関係に支障が出ることがあります。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は白血球の構成要素であるリンパ球のがんです。悪性リンパ種には数多くのタイプがありますが、特徴的な症状があります。
- 温度などにかかわらずシーツがぐっしょりするほど大量に発汗する
- 原因不明の高熱(38℃以上)が1~2週間続く
- ダイエットもしていないのに体重が6か月で1割程度減少する(60kgの方では6kg程度)
といった症状があらわれることがあります。
悪性リンパ腫は何らかの機会で内視鏡検査やCT検査を行った際に発見されることが多く、自覚症状がないことが多いです。
感染症
細菌やウイルスなどに感染すると、発熱に伴って、大量の発汗がみられる場合があります。近年、結核がまた増加してきており、異常な多汗があって検査を受けて、はじめて感染がわかる場合もあります。
夏なのに汗をかかない
(汗があまり出ない)方へ
暑い最中でもあまり汗をかかない、まったく汗をかかないという方もいます。甲状腺機能低下症(橋本病など)で甲状腺ホルモンの分泌量が低下してしまった場合に汗があまり出ないことがあるため注意が必要です。
発汗が少ない状態はパーキンソン病、シェーグレン症候群、糖尿病性神経障害、先天的な代謝異常などの他に、抗コリン薬などの薬剤による影響も考えられます。また、熱中症で症状が重くなると、汗が止まることがあります。
汗があまり出ない時に
疑われる病気
橋本病
橋本病は甲状腺機能が低下する疾患の代表的なもので、自己免疫によって甲状腺が慢性的に炎症を起こし、甲状腺の細胞が壊れていく疾患です。そのため、慢性甲状腺炎とも呼ばれます。甲状腺機能の低下が進行してくると、甲状腺の腫れとともに、代謝が低下し汗をほとんどかかない、乾燥肌になる、髪の毛が抜ける、体重が増加するといった症状があらわれます。
パーキンソン病
パーキンソン病の罹患者の5~6割に発汗障害があらわれます。発汗が減少する部分と、多汗になる部分ができることも特徴で、四肢の発汗が減少するかわりに、顔を中心として上半身の発汗が増えるといった傾向があります。
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群は唾液腺や涙腺など全身の外分泌腺に炎症が慢性的に起こり、ドライアイ、ドライマウスなどの症状が特徴的な自己免疫疾患の一つです。シェーグレン症候群の約4割の方が外分泌腺機能の低下を起こし、汗や皮脂が少なくなることで乾燥肌などの症状が全身にあらわれます。確立された治療法が今のところ発見されていないため、国の難病に指定されています。
熱中症
熱中症も軽症のうちは大量発汗などがありますが、重症になってくると身体の水分が減少してしまうため、発汗も少なくなり、さらに体温調節が難しくなります。
重症化してくると、激しい頭痛、嘔吐などから、意識障害を起こしたり、痙攣を起こしたりして生命に危険が及ぶこともあります。自身での行動が困難なほど症状が進んだら、周りの方はすぐに涼しい場所にはこび、救急車を呼ぶなどの対応をしてください。
先天性無痛無汗症
生まれつき末梢神経の障害で自律神経に問題がある状態です。痛みや温度をほとんど感じない疾患で、遺伝性の遺伝子異常が原因となっています。温感や痛覚などが無い上、体温調節機能が著しく低下していますので、熱中症のように高体温から痙攣、脳症といった状態を起こします。また痛みを感じないため、怪我を繰り返すことで発達に遅れがでることもあります。知的障害や発達障害を合併することも多いのですが、完治させる治療法がみつかっておらず、国の難病に指定されています。
Fabry病(ファブリー病)
生まれつき、体内で糖や脂質を代謝する酵素であるα-ガラクトシダーゼが不足しているため、細胞に糖脂質であるグロポトリアオシルセラミドという物質が蓄積してしまい、様々な臓器で機能障害が起こります。激しい手足の痛み、無汗、臀部や陰部などの発赤といった症状が特徴的で、発汗しないため体温が上昇しやすくなります。成長するに従い重症化していき、各種臓器にも影響が及ぶようになりますが、近年、α-ガラクトシダーゼの補充やそれを補う療法などが開発され、劇的な改善が期待されるようになってきています。
発汗異常に気づいたら
内分泌内科(甲状腺内科)へ
汗をかくことについての悩みは人それぞれです。冬でもちょっと動くと汗をかいてしまってハンカチが何枚も必要、汗とともに動悸やほてりがある、疲れやすいなど多汗の悩みがある一方、夏でもほとんど汗が出ず体温調節ができずにつらいといった悩みのある方もいます。原因は様々ですが、甲状腺の病気の可能性があります。
当院では発汗の異常について内分泌異常を含めた様々な方向から原因を検討し、適切な治療方針を提示していくことができます。
発汗のお悩みについて、体質だから、更年期だからなどの自己判断であきらめてしまわず、お気軽にご相談ください。